より理解が深まる前がき
職場でのパワハラ、人間関係、プレッシャーなどから精神疾患に罹る人は、近年増加傾向にあります。一定期間、有給取得してリフレッシュ、休職、配置転換などで復帰できる人もいますが、これらを以ってしても症状が改善されず、退職をされる人もおられます。
また誰にも相談できずに自ら逃げる思いで退職される人もおられます。
どんな状況でも、職場要因のストレス、精神疾患を抱えながら退職するのは決して悪いことではありません。たった1度きりしかない人生を会社に振り回されるのは、長い仕事人生において、決して有益とは思えません。
ただし、退職となると相当の覚悟が必要となります。またストレスや精神疾患を抱えながらの転職活動は、不安に思われる人の方が大多数だと思います。殊に、お金に関する心配毎はある程度把握しておきたいものです。
そこで退職後に貰えるお金として失業手当(失業保険)があります。
この記事ではストレスや精神疾患要因で退職を検討している人に向けて、退職後に貰える失業手当の優遇措置について経験談を交えて解説しています。
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1.失業手当(失業保険)とは?
失業手当(失業保険)を正式には雇用保険の『基本手当』と呼びます。この記事では一般的に馴染みのある失業手当で話を進めていきますね。
失業手当は離職した人が、再就職に向けて給付できる公的支援制度です。
会社員であれば一般的に毎月の給与から”雇用保険料”が引かれますよね?雇用保険料は事業主と従業員とで折半されています。
この労使折半保険料と、国庫が失業手当の財源になります。
2.受給条件は?
失業保険の一般的な受給対象者は以下となります。
・在職中に雇用保険に加入していた
・離職日以前の2年間に12ヵ月以上雇用保険に加入
*通算して12ヵ月以上あれば可
・就労の意思があり、求職活動を行っている
これら条件をクリア出来ていれば受給できます。
出典:『離職されたみなさまへ』(厚生労働省)に基づき作成
3.一般的な自己都合退職の場合
キャリアアップ、異業種へのチャレンジ、待遇面での不満などで退職した場合は”正当な理由のない退職者”と区分されます。これら一般的な自己都合退職でも、受給条件をクリアしていれば問題なく受給はできます。
一般的な自己都合退職であれば受給日数(所定受給日数)は以下の通りです。
出典:『基本手当の所定給付日数』(厚生労働省)に基づき作成
・受給日数は被保険者期間によって変わる
・最長で150日(被保険者期間20年以上)
・受給待機期間(2,3ヵ月)後に受給開始
一般的な自己都合退職者の場合、雇用保険の被保険者期間によって受給日数は異なります。被保険者期間が長ければ、受給日数も長くなってますね。
また受給待機期間が存在し、一般的な自己都合退職者はハローワークへ失業手当の申請を行ってから、約2、3ヵ月以降ではないと失業手当は受給できません。
出典:『離職されたみなさまへ』(厚生労働省)に基づき作成
4.メンタル要因での自己都合退職の場合
さて、ここからが失業手当の優遇措置の話になります。
一般的な自己都合退職者と比較して、メンタル要因での自己都合退職者が受けられる主な優遇措置の一覧が以下となります。
出典:『基本手当等の現状について』(厚生労働省)に基づき作成
この一覧から分かるように、一般的な自己都合退職者よりもメンタル要因での自己都合退職者の方が手厚く優遇されているのが分かりますよね。
各優遇措置の詳細は後述しますが、まずは”正当な理由のない退職者”から”正当な理由のある退職者”へなる必要があります。たとえ”正当な理由のない退職者”だったとしても、”医師の証明書”を提出することによって優遇措置が受けられる可能性があります。
以下フローで、正当な理由のある退職者になるための手順を説明しますね。
*朱記が一般手順と異なる点です
- STEP1離職
離職票-1,2が届く
- STEP2求職申込・受給資格の決定
ハローワークで求職申込・受給資格の手続き
▶手続き際に、医師の証明書をもらう
▶医師へ証明書を記載してもらう
*証明書は遅くても2週間以内が良い - STEP3雇用保険セミナーへの参加
受給者証、失業認定報告書の受取り
*セミナーは7日待機期間後の場合あり
▶医師の証明書はここでの提出がベスト - STEP4待機完了(7日間)
受給資格決定日より7日間は待機期間
*失業手当給付対象外の期間 - STEP5▶給付制限(2,3ヵ月)
*意見書が承認されれば給付制限なし - STEP6失業認定日
認定日毎に受給者証、失業認定報告書の提出
*認定日までに求職活動実績が必要 - STEP7失業手当の振込み
指定口座へ日数分の失業手当が振込まれる
▶STEP2から約1ヵ月後に受給可能
STEP1.離職
離職後に概ね10日以内に離職票-1,2が郵送されてきます。この離職票がないと失業手当の申請ができないので、できれば退職前にいつ頃届くかを確認しておいた方が良いでしょう。
届いた離職票-2の退職区分の確認と、具体的事情記載欄(離職者)に記入します。
・離職理由の区分が4Dになっている
⇒4Dは正当な理由のない自己都合退職扱い
・具体的事情記載欄(離職者用)に記入
⇒〇〇のため離職
*〇〇は病名、療養、ストレスなど
*会社側記載欄が自己都合でもOK
STEP2.求職申込・受給資格決定
離職票-1,2が届き次第、管轄のハローワークへ手続きに行きます。
とにかく早ければ早い方が良いです。
・離職票-1,離職票-2
・マイナンバーカード
*なければ個人番号が確認できる書類
・身元確認書類(運転免許証、パスポートなど)
*マイナンバーカードがあれば不要
・証明写真2枚(縦3×横2cm)
*マイナンバーカードがあれば必要ないが、
認定日毎にマイナンバー掲示が必要
・印鑑 *訂正印として
・本人名義の預金通帳 or キャッシュカード
*振込口座の確認のため
ハローワークで最初に求職申込を行います。ハローワークに求職者として登録するという意味です。
受給資格の決定では、失業手当が受給できるかどうかの決定を行います。
必要な手続きは係の人が教えてくれますので、基本は言われたように進めれば良いです。
ただ1つ重要なのは、”正当な理由のある退職者のアピール”です。
離職票-2の具体的事情記載欄から、察っしの良い係員なら気付きますが、筆者の場合はスルーされそうでしたので、『精神的な理由で辞めたんですが…』と切り出しました。
そう言ったら、雇用保険受給に関する証明書(医師の証明書)を渡され、後日持って来てくださいと。
(デリケートな話題なので察して欲しかったですが…)
この医師の証明書を必ずもらってください。
また医師の証明書はできるだけ早く主治医に記載してもらってください。
・精神的な理由で辞めたことを説明
・医師の証明書の取得
・医師の証明書は早めに準備する
この証明書が後に”正当な理由のある退職者”になる可能性を秘めた切り札です。
STEP3.雇用保険セミナーへの参加
STEP2の受給資格決定の際に、雇用保険セミナーへの参加日時を案内されます。
このセミナーでは受給者証(雇用保険受給資格者証)、失業認定報告書等の重要な書類を受け取るので、必ず参加しましょう。
これら書類は失業認定を受けるにあたって都度、提出が必要な書類になります。
またこの時点で医師の証明書が準備できていれば、セミナー受付の際に証明書を提出。
まだ準備ができていない場合は、でき次第ハローワークへ持参しましょう。
*とにかく医師の証明書は早めに動く!
・受給者証は失業認定日の度に必要なもの
・失業認定報告書は求職活動履歴を記載するもの
・セミナー参加で医師の証明書提出がベスト
なお、この時点では仮の受給者証が渡されます。受給者証トップに分かりやすく仮と記載されていますので、すぐに分かると思います。
また失業認定報告書には初回の認定日が記載してあります。
初回認定日の1週間前くらいには、正式な受給者証が受け取れるよう医師の証明書の段取りをしましょう。
STEP4.待機期間完了(7日間)
STEP2の受給資格決定から7日間経過するまでを待機期間といいます。
この期間中は失業手当の対象期間となりません。
またSTEP3のセミナー参加と、STEP4の待機期間完了は順序が逆になる場合もあります。
STEP5.給付制限 *優遇措置あり*
一般的な自己都合退職者は7日間の待期期間の後に、さらに2,3ヵ月間の待機期間が設けられています。
つまりSTEP2の受給資格決定日から7日+2、3ヵ月後に失業手当が受給できる準備が整います。
正当な理由のある退職者が認められれば、2,3ヵ月の給付制限はなくなり、7日間待機後から支給日数のカウントが始まります。
STEP6.失業認定 *優遇措置あり*
失業認定報告書に記載してある失業認定日に、受給者証と失業認定報告書を持参してハローワークへ行きます。報告書の求職活動状況を確認され、失業認定が行われます。
その際に次の失業認定報告書を渡されるので、次回の認定日を確認し、求職活動の実績を作ります。
後述しますが、ある一定の条件では求職活動の回数が減る優遇措置があります。
STEP7.失業手当の振込み
無事に失業認定されれば、認定日から5日営業日前後で指定口座に失業手当が振込まれます。
5.雇用保険受給に関する証明書の重要性
ここまで読んでいただければ、医師の証明書の重要性と急ぐ理由がよく分かると思います。
これ1枚で優遇措置がある=正当な理由のある退職者になる可能性がある証明書です。
基本的には主治医が聞き取りを行いながら記載しますが、相違が無いように確認しておきましょう。
・就労の意思がある事を伝える
・特定理由離職者2に区分変更 4D⇒3C,3D
・被保険者期間が離職日以前の1年間に6ヵ月以上
*通算して6ヵ月以上あれば可
・給付制限なし*待期期間7日間はあり
・初回の除き4週間毎に1回受給できる
*求職活動実績は必要
まず第一に受給条件にある、就労の意思がないと受給できません。
実際に働く意思と体力があれば、”働ける状態にあること”を主治医に伝えましょう。ここでの就労の意思とは、週20時間以上就労できる状態です。
次に傷病名と転職のすすめの欄です。
実際にハローワークへ問い合わせたのですが、あまりここは重要視されていない様子でした。
今現在メンタル疾患要因でも働ける状態であるか?を重要視されているようです。
*傷病名によっては一般に就労が困難と判断される場合があります
医師の証明書を以って、最終的な判断を管轄するハローワーク側で行います。
たとえ証明書が記載されていても、必ず優遇措置が受けられるわけではありません。
事前に管轄するハローワークへ問い合わせをすることをお勧めします。
正当な理由のある退職者と認められれば、離職理由の区分が4Dから3C/3Dへ変更され”特定理由退職者2”となり優遇措置が受けられます。
まず雇用保険の被保険者期間の短縮優遇措置です。
正当な理由のない退職者では、最低でも離職日以前から24ヵ月遡って通算12ヵ月以上の加入が必要でしたが、正当な理由のある退職者は12ヵ月遡って通算6ヵ月以上あれば受給条件を満たします。
被保険者期間の通算6ヵ月以上とは、月内に賃金が支払われた日数が11日以上ある、または賃金が支払われた時間が80時間以上ある月を1ヵ月としてカウント(パート、バイト問わず)
続いて受給制限(2,3ヵ月)がなくなり、7日間待機後から初回認定日までに必要な休職活動実績があれば、失業手当を受給できます。
認定日2回目以降は、求職活動実績を行っていれば4週間毎に1回の頻度で受給できます。
出典:『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(厚生労働省)に基づき作成
6.一定の精神疾患でなり得る就労困難者
ここでは更にもう1歩踏み込んで、”就労困難者”の区分の可能性をみてみましょう。
筆者もこの就労困難者扱いで失業手当を受給となりました。
6-1.就労困難者とは?
メンタル要因における就労困難者とは、簡単に説明すると”精神障害者”として扱われます。
この記事では障害者手帳を所持していない事を前提としていますので、医師の証明書の内容によっては精神障害者として扱われるケースがあります。
精神障害者など、一般に就職する事が困難である人が就労困難者と扱われます。
6-2.精神障害者となり得る医師の証明書内容とは?
ある一定の障害、疾病によっては、障害者手帳を取得してなくても医師の証明書で就労困難者と認められるケースがあります。
・傷病名、程度によっては認められる場合がある
・就労の意思があり、求職活動を行える状況
傷病名が統合失調症、うつ病、躁うつ病(双極性障害)、てんかんなどと記載されている場合は認められる可能性があります。
またこれら疾患は、精神障害者手帳を申請する際にも同様に審査されます。
つまり手帳を所持していなくても、それに相当する疾患として扱われるわけですね。
しかし症状によって”働けない状態”であると判断されれば、受給条件である求職活動を行いえない状況に該当し、受給はできなくなります。
なお就労困難者として認められるかどうかについては、特定理由退職者2のケースと同様に、管轄するハローワーク側の判断となります。
6-3.特定理由退職者2との違い
就労困難者は特定理由退職者2と異なり、さらに手厚い優遇措置があります。
・所定受給日数の増加
・求職活動回数の軽減
どちらも雇用保険の被保険者期間が1年未満(被保険者期間が通算6ヵ月以上)ですが、所定受給日数が大きく優遇されます。就労困難者は最低でも150日あります。
これは特定理由退職者2の被保険者期間20年以上と同じ日数です。
また求職活動回数も軽減され、4週間に1回のみとなります。
一方特定理由退職者2は、正当の理由のない退職者と基本同じ扱いとなります。
出典:『障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象』(厚生労働省)に基づき資料作成
7.受給期間延長
受給期間延長と聞いたら給付日数が延長されそうな感じですが、残念ながらそうではありません。。
ここの延長とは、支給開始日を延長できる優遇措置です。
・受給資格があれば基本1年間は延長可能
・延長期間を超えての失業手当は支給されない
・30日以上働けない場合、最長4年まで延長可
・傷病手当金満期後に失業手当を受給できる
失業手当の受給期間は原則として離職日翌日から1年間です。
給付日数が年齢や被保険者期間によって異なりますが、特別な理由がない限りは1年間です。
つまりフローSTEP2の受給資格の決定を早々に行う必要はありません。
離職後は『何も考えずに半年はバカンスを楽しみたい!』と計画してる人もいるでしょう。
ただし所定給付残日数がいくら残っていても、受給資格決定の手続きが遅れれば、離職日翌日から1年を超えては失業手当は支給されません。
一方、特定理由退職者2の人や就労困難者の場合はこの1年に加えて最長で3年の延長ができます。
延長には申請が必要となりますが、基礎部分の1年を含めると最長4年間となります。
この優遇措置がある事で、例えば休職中に退職した人が、健康保険から支給されている傷病手当金の満期を迎えてから失業保険を受給するといったように、長期に渡り毎月滞りなく給与の代わりとして給付金が受給できます。
・傷病手当金と失業手当は同時受給は不可
・受給の順序は必ず傷病手当金⇒失業手当
出典:『離職されたみなさまへ』(厚生労働省)に基づき作成
あとがき
メンタル要因での退職者が、何も知ることなく正当な理由のない退職者扱いになってしまうと、その後の生活、転職活動に大きく負担が掛かってしまうのは容易に想像できます。
筆写自身、離職前の休職期間中に、藁にもすがわる思いで各方面から情報を収集し、特定理由退職者2になる事を知りました。それだけで充分だったのですが、ハローワークと話を進めていく上で、就労困難者になり得るのでは?とアドバイスを受けました。
その後はハローワークスタッフ、主治医を始め、多くの人のサポートを受けながら、就労困難者扱いとして失業手当を受給することになりました。
離職後の漠然とした不安が一気に吹き飛んだあの日の帰り道。
車を走らせながら安堵感?達成感?満足感?色んな感情が交ざりあい、せきを切ったように涙が溢れ出ました。
事前に知ることで少しでも誰かの役に立てればと思い、記事への掲載に至りました。
同じ状況で悩んでおられる人の、参考になる内容であれば幸いに思います。
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