より理解が深まる前がき
1990年代後半から”うつ病はこころの風邪”のキャッチコピーで、世間へうつ病を始めとする精神疾患の認知度を一気に高めました。
あれから30年近く経過した2024年現在、精神疾患が原因で仕事や私生活に支障を及ぼす人が増加し、これからの人生を送る上で心のケアは必要不可欠となりました。
厚生労働省が発表した生涯を通して何らかの精神疾患に罹る可能性は5人に1人といわれています。またうつ病は15人に1人です。
そして近年増加傾向にある適応障害が、角界の著名人が罹患した事、休職の診断名として増加した事をきっかけにクローズアップされています。私自身も在職中に適応障害を発症し、後にうつ病と診断され今現在も尚、10年以上に渡り定期的に通院しています。
この記事では誰もが身近となった適応障害とうつ病の違いについて解説しています。
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1.適応障害とうつ病患者数の推移
身近になってきたといわれる適応障害とうつ病について、実際に患者数の推移がどう変化しているのかを表したグラフが以下となります。
参考URL:https://www.e-stat.go.jp/
・適応障害患者数は12年で3倍に増加
・うつ病患者数は概ね横這いで推移
・適応障害とうつ病で患者数の推移が異なる
このグラフで最も目を引くのは適応障害の患者数増加です。わずか12年余りで3.1倍へ上昇しており、3年間毎で1.3倍の上昇率です。前がきで近年増加傾向にあると述べた通り、この急激な増加に各メディアが取り上げるのも納得です。
続いてうつ病の患者数推移ですが概ね横這い状態です。この結果に少し疑問を抱きませんか?
適応障害が増加していれば、うつ病患者も増加していそうな感じがしますよね。
その理由について以下で掘り下げていってみます。
2.適応障害とうつ病の違い
両疾患の患者数の推移が確認できた所で適応障害とうつ病の違いは何なのか?について、以下が両疾患の構成となります。*朱記は異なる点です
参考URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-041.html
参考URL:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
・発症原因が明確か不明確かで診断が異なる
・うつ病は落込みの度合いが著しく低下
・落込みの矛先が自責の念か自分の価値か
・過剰ストレス起因か思考(脳)起因か
2-1.発症原因
適応障害は発症の引き金となった要因が明確です。例えば昇進、転勤・異動、育児、借金などのストレス要因が引き金となり発症すると考えられています。またストレスには昇進や結婚のような一見喜ばしい出来事も含まれます。
一方でうつ病は適応障害のように引き金となる要因が不明確です。
この発症原因が明確か不明確かが両疾患の大きな違いです。
2-2.身体的症状
身体的症状は両疾患ともに概ね同じです。ただうつ病患者の方が初期症状として倦怠感、不眠などといった身体的症状を訴える人が多いようです。
2-3.精神的症状
共通する部分が多いですが、落込みの度合いが決定的に異なります。
うつ病は自らの価値に疑問を抱き”死にたい、消えたい”といった希死念慮が窺えます。適応障害でも同じように気分の落込みはありますが、社会と自らのギャップに対して”自責の念”が強く現れています。
適応障害が自責の念とすると、うつ病は自らの価値に矛先が向けられていると考えられます。
2-4.特徴
適応障害ではストレス要因が明確なため、ストレス環境下でなければ比較的普段通りの生活が送れます。一方うつ病は一日中ゆううつ感が続き、やる気や喜びといったポジティブな要素が欠如しています。
同じ精神疾患でも、ストレス起因か思考(脳)起因かの違いが根底にあるといわれています。
3.疾患の構造イメージ
両疾患の発症メカニズムについて、自身の体験を通して以下のようなイメージで捉えています。
・1層目は誰にでも起こり得るストレス反応
・2層目は過剰ストレスによる反応
・3層目は思考(脳)によるストレス増幅反応
・ストレス対処への思考には個人差があって当然
日々、私たちは色んなストレスにさらされています。発症の際に何による反応か?で診断名が適応障害かうつ病に分かれるのだと考えます。
外枠1層目のうつ状態/抑うつ状態の場合、一般的で誰にでも経験があるような層です。例えば悪口を言われて落込んだ、仕事でミスをしたなどのストレス要因に対し、通常どおりの生活を送りながらも、どこか気分が晴れないようなモヤモヤした感覚の状態です。
2層目では何らかのストレス要因が自身のキャパシティを超えた場合に適応障害が発症する層です。長時間労働、パワハラ、育児疲れなど、度を越した過剰なストレス下で発症すると考えられます。
3層目は全ての層の中心に位置し、それに加え裾野が大きく広がってどの層にも属しています。
この層ではうつ状態/抑うつ状態、適応障害だと診断されたとしても、うつ病が持つ性質の”思考(脳)の影響”が常に存在している事を示します。
ストレスへの免疫は人それぞれです。感受性の高い人であれば一般的には些細な出来事でも、思考がストレスを増幅させ、うつ/抑うつ状態や適応障害、そしてうつ病を発症させます。また思考によるストレスの増幅度合が人によって異なるのは当然の事です。
4.あとがき
適応障害とうつ病は定義上では明確に区別されています。しかしその境界は非常に曖昧だという事です。私の主治医もよく口にしていた台詞です。
どちらの診断名が下った私自身でさえ、いつからが適応障害で、うつ病がいつから発症したのかは良く分かっていません。その位はっきりした診断が出し難い疾患、分野なのだと考えています。
ですが医学の発展とともに、医療は日々進化し私たちの生活を豊かに変えてくれています。たとえ脳内の問題であっても治療可能となる時代がいつか来るでしょう。
もちろんそれを個性として捉える考え方もあると思います。ただ精神疾患が原因で生活に苦しむ人が少しでも減ってくたらと経験者として切に願っています。
さて最後になりましたが適応障害とうつ病の違いについてです。それに対する私の見解は以下となります。
『違いとしては定義上明確だが、その原因を突き止めるのは極めて困難』
実際問題として主治医と時間を掛けながら、じっくりと見極めなければ適応障害なのかうつ病なのか、実は違う精神疾患なのかは分からない領域なのだと考えます。
この記事を読んでいただき、私の経験が誰かのお役に立てれば幸いに思います。
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