より理解が深まる前がき
障害者雇用の促進等に関する法律により、民間企業の障害者法定雇用率は今日まで段階的に引上げられており、昨年度まで2.3%(43.5人に1人の割合)と義務づけられていましたが、2024年4月より障害者雇用率は2.5%以上(40人に1人)に引上げられました。
主たる目的は『事業主における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務』です。
つまり健常者も障害者も共存・共生できる社会の創造です。
しかし残念ながら現実はそう甘くはありません。
従業員100人未満の中小企業における障害者雇用達成率の低さは抜きん出ており、雇用率が未達の企業のうち9割弱は障害者の雇用が0人となっています。
企業の人手不足が深刻化してきた現在、企業からハローワークへ「選り好みをしている状態じゃないから障害の有無に関わらず良い人材を紹介して欲しい」との相談が寄せられいると伺いました。
この言葉を聞いた瞬間の正直な感想は『何を今さら言ってんだ…』です。
しかし冷静に考えてみると法改正と企業の人材ニーズが追い風となり、障害者の雇用は今後拡大していくのでは?とポジティブな考え方もできるなと感じました。
この記事では一部精神障害者に焦点をあて、障害者全体を取り巻く雇用状態と今後への期待について解説しています。
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障害者の雇用率の推移
2024年4月。まえがきで述べたように障害者雇用率が2.3%から2.5%へ引上げられました。
では実際に今までの障害者雇用状態はどんな感じだったのでしょうか?
以下が民間企業における障害者雇用状況の推移を示したグラフになります。
出典:「令和5年障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)に基づき作成 *障害者数のカウントはP6参照
- ここ20年で確実に障害者の雇用機会は増加している
- 障害別に雇用者数が異なっている
- 精神障害者の雇用者数が毎年最も少ない
ご覧の通り、H14(2002年)~R5(2023年)の20年以上に渡り、障害者の雇用率は増加していってますね。
この結果は障害者の人々への配慮がなされてきていると前向きに捉えることができます。
体感的にはそうは思えなくても着実に雇用の機会は増加しているという事実です。
しかし障害別にみたらどうでしょう?
筆写も含めた精神障害者の雇用が凄く出遅れた感がありませんか?
精神障害者の雇用が低い理由について次は考えてみましょう。
精神障害者の雇用の実態
まず先ほどのグラフを障害別で雇用の割合をみてみましょう。
出典:「令和5年障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)に基づき作成
- 急激に障害者雇用が増加している
- 知的障害と同程度の割合
- 近年の精神障害者雇用数は横ばい傾向
- 精神障害は企業とのマッチングが難しい
直近だと概ね過半数が身体障害、残りの40%を知的障害と精神障害で半々といったところでしょうか。
知的障害と精神障害で大きく異なる点は、精神障害の急激な増加速度です。
知的障害は20%前後で推移しているのに対して、精神障害は急激に増加し今では知的障害と肩を並べる程に増加してきました。
この背景には精神障害者への理解が時代と共に浸透した結果だと推察します。
しかし良いことばかりではありません。
このグラフは障害別の割合なので読み取り難いですが、純粋な精神障害者雇用数の増加率はここ5年では以前の勢いをなくし横這い状態です。
その理由として下記が挙げられます。
- 他の障害に比べると職場定着率が低い
<1年後の定着率>
▶知的障害者:約70%
▶身体障害者:約60%
▶精神障害者:50%以下 - 企業側の職場定着への配慮が難しい
- 安心・安定した働き方が他の障害に比べ困難な印象がある
精神障害者特有の症状が、企業に対するイメージを損なっている可能性を高くしていると窺えます。
今後の障害者の働き方への展望
障害者雇用の促進等に関する法律が改正、また段階的な改正が発表され、筆者が今後に期待する改正内容を4つピックアップしました。
出典:「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(厚生労働省)に基づき作成
- 令和6年4月から雇用率2.5%へ引上げ
(従業員40人以上に障害者1人) - 令和8年7月から雇用率2.7%へ引上げ
(従業員37人以上に障害者1人) - 令和7年4月より除外率が業種毎に一律10%引き下げ
- 現在除外率10%以下は除外対象外へ
- 今後障害者の受入れ先は確実に増加する
除外率(除外率制度)とは?
障害者が一般的に困難とされる業種において適応される制度です。
業種毎に除外率のポイントが定められており企業側の障害者雇用の負担義務を軽減させます。
以下の計算で除外される雇用者を算出し、法的雇用率から障害者の雇用の有無、人数を把握します。
◆除外雇用者数の計算
- 雇用労働者数×業種毎の除外率
◆障害者雇用の有無、人数の計算
- (雇用労働者-除外雇用者)×障害者法定雇用率
例)従業員数100人で除外率10%のケース
100×0.1=10
(100-10)×0.025=2.25
*小数点以下切捨て
最低2人以上の障害者を雇用する義務発生
除外率の値の設定については、資格、免許、安全性への配慮などといった専門性の高い知識が必要とされる業種ほど高くなる傾向です。
なお除外率の一律10%引下げはH16(2004年)以来、約20年ぶりの改正となります。
*施行は令和7年4月から
企業が人材確保に必死になる現在、障害者雇用率の引上げ、除外率の一律10%の引下げは、全ての障害者にとって働きやすい環境を手に入れる機会が増えていくことになりそうですね。
企業側の責任と義務
さて、障害者にとって今後働く機会が増える見込みが分かったところで企業側の対応が気になるところです。
障害者との共存・共生の観点から、企業へは取組みに向けた責任と義務が課せられます。
- 1障害者雇用状況報告
- 毎年6月1日の状況
- 2障害者雇入れ計画作成命令
- 2年間の計画を作成するよう公共職業安定所長が命令
- 3障害者雇入れ計画の適正実施勧告
- 計画の実施状況が悪い企業に対し適正な実施を勧告
- 4特別指導
- 雇用状況の改善が特に遅れている企業に対し公表を前提とした特別指導を実施
- 5企業名の公表
◆公表企業参考
- 株式会社ベリテ(再公表)
- 株式会社タウンハウジング(再公表)
- シーレックス株式会社(再公表)
- 株式会社サンポークリエイト(再公表)
- ボードライダーズジャパン株式会社
- 三栄電気工業株式会社
- SKECHERS JAPAN合同会社
- 株式会社 SIMMTECH GRAPHICS
引用:「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について」(厚生労働省)
出典:「令和5年障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)に基づき作成
*P10を参照
これだけ見れば行政指導を受ける企業は少ないように感じます。
ただ何事にも『氷山の一角に過ぎない』という側面があります。
公表された企業が氷山の一角でも、その企業が受ける社会的ダメージは甚大です。
例え雇用率を達成しているかといって、障害者を本気で戦力と考える企業が日本国内にどれだけ存在するかは未知数です。
あとがき
冒頭まえがきで企業側からハローワークへ「障害の有無に関わらず良い人材を紹介して欲しい」の言葉に対して思うことがあります。
良い人材を育てるのが企業としての育成に繋がらないのでしょうか?
どんなに高学歴で知識を取得していても
どんなに前職で高評価を得ていても
新しい環境では下準備程度です。
企業でしっかりと人材育成がなされていれば、今頃になって慌てふためくことにはなりません。
これができている企業であれば、戦力が潤った今の環境で虎視眈々と次の戦略を練っています。
良い人材を欲しがる企業はもしかしたら、これまでのツケがまわってきたのかもしれません。
さて、少し話は脱線しましたが障害者の今後について、皆さんどう感じたでしょうか?
筆写自身が精神障害者として生きていますが、障害者が雇用の機会が得られること、また現代の人手不足の状態を鑑みると、雇用の在り方そのものが変化してくるのでは?と感じています。
終身雇用は崩壊し若手が企業から離れていく中で、障害者の立ち位置は決して不利ではないと考えます。
ハンディキャップを抱える人は、それと向き合って得た特性を発揮できないから苦しいんです。
そんな障害者の人々が能力を最大限に発揮して働ける企業が今後増えてくることを願っています。
さていかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただき、今後生きていく上で少しでも参考になっていただければ幸いに思います。
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