より理解が深まる前がき
1992年4月1日に育児休業法が施行されて30年余り。
2024年8月現在までに「育児と仕事の両立支援関連法」が幾度となく改正されてきました。
近年では2021、2022、2023年と順次法改正・施行が行われ、今年2024年も大幅な改正が打ち出されました。
この記事では、育児と仕事の両立における現状の問題点と、新たに始まる2025年からの改正内容について、実際に制度を請求する従業員の立場で、直接関係する項目に焦点を絞って解説しています。
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1.育児関連法が改正され続ける理由
近年毎年のように繰り返し改正される育児と仕事の両立支援関連法ですが、なぜこれほどにまで急ピッチで整備が進められているのでしょうか?
それにはまず日本の育児における課題を探ってみる必要がありそうです。
以下では日本と欧州主要国を比較した出産・育児の実態をまとめてみました。
- 日本は出産・子育てがしやすいという意識は薄い
- 身体・精神的負担が年々増加傾向
- 子育てをする親の自由な時間が確保できない不満
- 共働きが一般的になり核家族世帯が増加
- 両親などから育児の協力が得られる機会の減少
- 出産後の女性の働き方としてフルタイムは難しい
出典:「子育てに関する当事者の意識・声(意識調査等から)」(内閣府)に基づき作成
この調査結果より、日本は出産・育児に関して負担・不満を抱えざるを得ない状態と国民の意識から見受けられます。
次に増加傾向にある身体的・精神的疲労や親自身の余暇の確保ができない要因として、世帯構成の変化が起因していると考えられます。
出典:「令和4年版男女共同参画白書」(内閣府)に基づき作成
育児・教養を進めていく上では協力者の存在が必要不可欠です。
女性の社会参画が進み核家族世帯が急速に進む中、かつては力強い支えとなっていた両親(義両親)の協力の機会が得られにくくなったのは、結果的に出産・育児に消極的な人の増加の一因となったと考えられます。
しかしこれは多様な働き方への現代のニーズです。
この状況を顧みて、時代背景に沿った法改正が進められています。
2.従業員に関係する2025年から始まる改正一覧
さて、今年2024年5月31日に公布され、来年2025年から新たに順次施行される育児と仕事の両立支援関連法の改正内容の一覧です。
ここでは従業員に対して直接的に影響を及ぼす改正ポイントを重点的に解説します。
予備知識として以下ブログも参考にしてみてください🤗
出典:「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正のポイント(公布日:令和6年5月31日)」(厚生労働省)に基づき作成
2-1.育児休業、次世代育成支援対策推進法の一部期限延長
- 育児両立支援関連法の有効期限が10年延長
2025年3月末⇒2035年3月末 - 2024年5月31日より施行
いきなり聞きなじみのない法律が出てきましたが、簡単に説明すると冒頭から使用している「育児と仕事の両立支援関連法」の一部の有効期限が延長になったということです。
育児と仕事にまつわる法律は細かく定められているため、この記事では両立支援関連法としています。
では何が延長されたかというと、実は両立支援関連法の有効期限が公布前では2025年3月末迄となっていましたが、公布後は2035年3月末迄となり10年間延長されました。
この改正については公布の日が施行日となりますので、2024年5月31日から既に適応されています。
2-2.所定外(残業)労働の制限対象の拡大
2025年4月1日より所定外労働、つまり残業の免除が小学校就業前までに拡充されます。
この認知度が決して高いとはいえない育児における残業免除の措置をご存じでしたでしょうか?
所定外労働とは各企業が定めている実労働時間です。法定労働時間は8時間/日ですが、企業によっては7時間半/日とさまざまですので、その所定時間を超えて労働する事を免除されています。
この制度は子を育て、教養する全従業員(パパ・ママ)が請求できる権利です。
是非、この機会にご活用いただければと思います。
2-3.子の看護休暇の見直し
2025年4月1日より「子の看護等休暇」に名称が変更され、多くの従業員がより柔軟に取得しやすくなります。
対象範囲は小学校3年生修了までに延長され、取得理由もクラス閉鎖や入園入学式などといったイベント毎への参加といったように、子の病気や予防措置など以外でも取得可能となります。*施行日までに省令により取得理由が拡大される可能性あり
除外される従業員も見直され、例えばパート、有期雇用者でも週3日以上の労働日数で請求できます。
子2人以上につき年間各5日の付与に変更はありません。
例)子1人は年間5日付与、子2人は年間10日付与(3人目以上への付与は一律年間10日)
ただし2025年4月1日施行後も休暇を取得するにあたり有給/無給の判断は事業主に委ねられます。
この制度は子を育て、教養する全従業員(パパ・ママ)が請求できる権利です。
2-4.育児のためのテレワーク追加(努力義務)
2025年4月1日より3歳未満の子を持つ従業員の働き方に在宅勤務が追加されました。
この制度は事業主側の措置、また従事する業務に大きく左右されますが、在宅勤務が可能な従業員については時短勤務などの措置を取らずとも、希望すればフルタイムで継続して勤務することができます。
この制度は改正前後を含め、企業の努力義務の範疇となります。
2-5.柔軟な働き方への措置等の義務化と個別意向聴取・配慮の義務
事業主は3歳以上から小学校就業前(未就学児)までの従業員に対して、育児・教養が負担にならないように配慮をする義務が課せられます。
◆事業主の配慮措置義務
- 始業時刻等の変更
- テレワーク(在宅勤務)等(10日/月)
- 保育施設の設置運営等
- 新たな休暇の付与(10日/年)
- 短時間勤務制度(努力義務から義務へ)
- ①~⑤の制度から2つ以上の制度を事業主は選択し、3歳になるまでの適切な時期に面談・書面などにより制度の個別周知・意向確認を実施する義務
◆従業員側の対応
- 事業主の選択した2つ以上の配慮措置から1つを任意に選択し行使できる
◆施行日:2025年11月30日迄
*2024年6月26日開催「第69回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」より2025年10月1日施行案を提示
引用:「資料2-1育児・介護休業法の改正に伴う政令で定める施行期日(案)」(厚生労働省)
この制度のポイントは、これまでカバーの薄かった3歳以上から小学校就業前迄の間の育児と仕事の両立支援関連法が拡充、義務化されたことと、子を育てる両親がフルタイムで働ける環境の配慮措置が義務化されたことあります。
改正前では短時間勤務制度が企業の努力義務とされていましたが、改正後では5つの制度から2つ以上の配慮措置を講ずる義務があります。
さらに支援措置内容を対象従業員へ周知し、意向聴取・確認を行った上で従業員が1つの支援措置を選択させることまでが事業主の義務の範疇です。
義務化の背景には、事業主の努力義務では措置を講ずる企業が少なかったことが挙げられます。
この改正で育児と仕事の両立支援関連法の改正主旨に沿った働き方ができることを大きく期待できそうです。
施行日に関しては厚生労働省から発表された資料の「政令で定める施行期日についての案」が提示されており、この案が決定されれば2025年10月1日が施行となります。
2-6.重要改正事項の概略
出典:「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正のポイント(公布日:令和6年5月31日)」(厚生労働省)に基づき作成
3.従業員が間接的に関係する改正
2025年4月1日から施行される従業員に間接的に関係する改正については簡単に紹介しておきます。
- 対象:従業員100人超の企業
- 一般事業主行動計画策定に関する改定
1)育児休業取得状況や労働時間の状況把握等(PDCAサイクルの実施)
2)育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定
- 対象:従業員300人超の企業
- 改正内容
現行1000人超企業に公表が義務付けられている育児休業等の取得状況の公表が300人超企業へ拡充
これら改正は主に事業主側に関する改正ですので、ここではサラッとポイントだけとしています。
4.各企業の自主的な取組み例
この度の改正を待たずして日本の各企業では社内独自で一種の福利厚生として、育児と仕事の両立支援へ力を入れている企業があります。
これら一部の企業HPを見てみると、福利厚生として実施しているというよりは「純粋に働きやすさを提供する事で組織全体を強化し、更なる事業成長へと繋げる」といったビジョンが垣間見えます。
自主的に法の範囲を1歩2歩先に大きく上回る措置を採っている企業こそが、今後世界の経済競争で日本を牽引していくのではないかと感じています。
参考リンク:「女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集」(厚生労働省)
あとがき
現代の深刻な少子化の進行状況、また男女ともに仕事と育児を両立できる職場作りを創造する観点より、育児関連法の整備は急務といえます。
実用性と継続性を兼ね備えた法改正は、今後の日本企業、経済を支えていく上で必要不可欠な取組みです。
また企業側としても国の取組みをしっかりと把握、運用しなければならず、一層両立支援に関する理解が必要となり、特に従業員数が少ない中小企業へは今後風当りが益々強くなることと推察します。
「大手企業に任せておけばいい」
「うちは人手不足で対応取る余裕はない」
と、他人事のような思いで構えている企業も実際に存在しますが、真っ先に不利益を被るのはそこで働く従業員です。
特に若手~中堅層の仕事への価値観は変化してきており、時代に沿った生き方を求め、積極的に自身が身を置く環境をより良くしようと考えています。
優秀な人材ほど早々に見切りをつけ、時代に取り残された企業が淘汰されていくのはそう遠くない未来のはずです。
従業員とその家族、そして自社を守っていくためにも、両立支援制度へのご理解をお願いいたします。
さて、いかがでしたでしょうか?
いくら法改正を繰り返したところで、実用性、継続性のない制度では全く意味をなしません。
また努力義務に留めてしまう制度では重い腰が上がらない企業が多数あるのも事実です。
今や育児と仕事の両立は福利厚生の一環ではなく、子を持つ親への必要最小限の配慮事項だといえます。
当たり前の権利を誰もが当たり前に請求できる。
これまで、そして今後も含め各支援制度は、そんな当たり前な世の中へ近付くきっかけに過ぎません。
今一度、従業員を抱える各企業の事業主は、本腰を入れて取組んでいただきたい課題です。
この記事を読んでいただき、育児と仕事の両立支援関連法でご自身が請求できる制度を有意義に利用できるお役立てになれれば幸いに思います。
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